制作の裏側

デザイナーとアーティストの違い

6月 28, 2013 笹金 達也

みなさんは「デザイナー」と聞くと、どんな印象を感じますか?

・カッコいい
・時代の最先端を走っている
・イマジネーション、想像力がハンパない
・1を言うと10分かってくれる

なんだかスーパーヒーローみたいな感じですね。
実際、いろんな方にも聞いてみたら、似たような回答をもらいました。

さて、以前私はとある企業の新入社員研修をしていました。
新入社員といっても新卒ではなく、キャリア採用でWebデザイナー候補生として採用された人たちのためのデザイナー研修です。
下は高卒、上は当時30歳くらいまでの幅広い受講生がいて、もがき苦しみながら未来のデザイナーになるために3ヶ月間頑張っていました。

そこで受講生の多くが間違った認識をしていることに気付きました。
どうやら「デザイナー」を「アーティスト」と認識しているんですね。

「デザイナー」と「アーティスト」の違い、分かっているようで分かっていないことが多いのです。

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まず分かりやすい「アーティスト」ですが、アーティストは基本的に「0から1を作る」ことをします。
何もないところから、自分の感覚だけを頼りに作品を作り上げていきます。
だから、アーティストと呼ばれる方は芸術的センスが最も必要な要件になるわけです。
多くの経験値も大切ですが、それ以上にその人の生まれ持った素質とか直感力がアーティストにはあります。
楽曲を制作する人、絵を描く人、彫刻する人、皆さん0から作り上げていきます。

それに対して「デザイナー」は私なりの考えだと「統計学のスペシャリスト」と言うことができます。
「デザイン」って実は何もないところから作る訳ではありません。
いろいろな統計的要素(インプット)があって、それらがきちんと理由付けされ、加工されてできあがる(アウトプット)のです。

例えば「アパレルのショップサイト制作」という場合、ショップサイトというアウトプットに落とし込みために、まずこのサイトの仕様を決めます。

・主なユーザーターゲットは?男性?女性?、20代?30代?
・閲覧デバイスは?PC?タブレット?スマフォ?
・取り扱いジャンルは?スーツ?カットソー?インナー?

ショップサイトのみならず、Webサイトを制作するときには必ず「どういう人に利用し、購入して欲しいか」というターゲットに関する策定が必要になります。
そのために必要なのは「統計」です。
年齢層別の購買行動、雇用形態(正社員、契約社員、アルバイト)、趣味・趣向、その他の消費行動などの統計情報を収集します。
そうして得られた膨大な情報の中から今回制作するWebサイトのターゲットユーザーを決定し、そのユーザーに合った色の配分やナビゲーションの形式、ページ全体の枠組み、Webサイトの構成などを決定します。
以上の工程を経て、Webサイトのデザインが決定し、HTMLページに落とし込んでいきます。

上記の例はWebサイトのデザインですが、他の分野(印刷物、建築、内装など)でも「デザイン」という考え方は同じです。
「建築デザイン」や「内装デザイン」という分野でも、業種別、建築別(事業用なのか住宅用なのか?)によってターゲットが異なれば、そのターゲットユーザーに合わせてレイアウトをしていきます。
なのでみなさんの中でも、ついついいつも買ってしまうショッピングサイトとか、いつも見てしまうサイトがあったら、制作側が設定したターゲットユーザーに知らず知らずのうちに合致していることになるのです。
ですから、「ついつい見てしまう」のではなく「必然的に見てしまう」ように仕掛けられているんですね。

そういったことから、デザイン会社でよく聞く言葉。

「とりあえずラフでいいから、ちゃちゃっとデザインしてよ」

これはデザイナーさんに決して言ってはいけない言葉なんですね。
デザインって、そんなにすぐにできるものではありません。
上で書いたような、統計学的な裏付けがベースになって出来上がるものなので、そんな簡単にはできません。
0から作るのはデザイナーではなくアーティストの仕事ですから、ついつい言ってしまう方は、お気をつけくださいね。

ウェブサイトなり印刷物を作る時には、「アート」な作品がいいのか「デザイン」な作品がいいのかをまず決めて、アートだったらそれこそ感覚的なものを伝えれば作品を作ることはできます。
デザインの場合は、そのウェブサイトや印刷物を「何の目的で」、「どういう人に見て欲しいか」をある程度決めておくと仕事がスムーズに進みます。
「思っていたものと違っていた」と感じるのであれば、何かが伝えきれていないのかもしれません。

この記事をきっかけに、「アーティスト」と「デザイナー」の違い、知って頂ければとても嬉しく思います。